先日のポストでも書きましたが、最近はファナーリーの学問論について少しずつ調べています。彼が「学問」そのものについて言及している(と思われる)のは、『親密の灯Misbah al-uns』(存在一性論に関する著作)と『エイサゴーゲー注釈Sharh Isaghuji』(論理学書)の2著作。このうち今回特に調べようと思っているのは、前者での学問論の扱いです。ファナーリーは『親密の灯』冒頭部で、学問の区分分けと思弁知の不完全さ、そして学問一般が備える構造に関して、順に論じていきます。これらの作業を通じてファナーリーが意図しているのは、恐らく「実相学 / 真理探究の学('ilm al-haqa'iq / al-tahqiq)」という1つの学知としての、存在一性論の確立です。それでは彼は既存の学問論を同論に対してどのように適用したのか(つまり実相学の主題・原理・問題をそれぞれどのように設定したのか)。その際、彼は前者をどのように改変したのか。またその改変は実相学の学問論的確立に対してどう寄与しているのか。これらが今回の調査で考察対象となるだろう点です。
今回はひとまず、『親密の灯』緒言(al-fatiha)第1-2章でファナーリーが提示している2つの学門分類を以下に掲げておきます。
[I. 預言者のハディースに依拠した分類(Misbah, 12-28, 2/1-2/29)]
学('ulum)
a. 身体的学('ilm al-abdan [医学など])
b. 宗教的学('ilm al-adyan [コーランとハディースに依拠した学])
b-1. 外面的学('ilm al-zahir)
b-1-i. 信仰箇条に関わるもの(=思弁神学['ilm al-kalam]・神学[al-'ilm
al-ilahi])
b-1-ii. 行為に関わるもの(=法源学['ilm usul al-fiqh]・実定法と学説、
ファトワーに関する学['ilm al-fiqh wa-al-madhhab wa-al-fatwa]・コーラン
注釈とハディースの字義学 ['ilm zahir al-tafsir wa-al-hadith])
b-2. 内面的学('ilm al-batin)
b-2-i. 内面の強化(ta'mir)に関わるもの(=神秘主義に関する学['ilm al-taṣa-
wwuf wa-al-sulūk])
b-2-ii. 神と被造物の関係や、如何にして一から多が生ずるかという問題に
関わるもの(=実相と開示、直観の学['ilm al-haqa'iq wa-al-mukashafa
wa-al-mushahada])
(※1 預言者の伝承に依拠しているのはa-bの区分のみで、bの下位区分はファナーリー自身によるもの;※2 内面的諸学は外面的諸性質[al-ahkam al-zahira]が完成してはじめて実現する)
[II. クーナウィーのal-Risala al-mufsiha に依拠した分類(Misbah, 28-32, 2/30-2/43)]
学('ulum)
a. 人間が身体的諸能力(al-quwa al-badaniya)によって独立して認識することが
できる学
b. 人間が知性('aql)によって、考察できる限りで(min hayth nazaru-hu)独立して
認識することができる学(=神の存在[wujud al-haqq]や単純意味概念
[al-ma'ani al-basita]を対象とする学)
c. 人間が独立して認識することが絶対的に(mutlaqan)できない学(=神の本体
[dhat al-haqq]や諸々の神名・属性の実相[haqa'iq asma'i-hi wa-sifati-hi]、
並びにそれら諸神名・諸属性の種々の関係の様態[kayfiyat idafati-ha al-
mutanawwi'a]などを対象とする学)
これら2つの分類がそれぞれどう対応するのかは未詳ですが、内容を見る限り(ファナーリー自身は明言していないようですが)、恐らくI-b-2-ii とII-c がともに彼の言う「実相学」に対応するものと思われます。
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