Montag, 2. Mai 2011

ルアイヘブ校訂・フーナジー『神秘の開示』

Khunaji, Afdal al-Din al-, Kashf al-asrar 'an ghawamid al-afkar, ed. Kh. El-Rouayheb (Tehran: Iranian Institute of Philosophy, 2010).

知らないうちに、昨年このような本が出ていました。フーナジーAfdal al-Din al-Khunaji, 1248年没はラーズィーFakhr al-Din al-Razi, 1209年没とトゥースィーNasir al-Din al-Tusim 1274年没の中間期に属する哲学者兼医者で、後代に大きな影響を与えた人物とされています。ファナーリーも『親密の灯Misbah al-uns』中で(私が確認しえている限り)1箇所、彼の名前に言及しており、そこから私も彼の名前だけは知っていました。本書はそんなフーナジーの代表的論理学書『神秘の開示Kashf al-asrar』の本文校訂と内容解説を収めた研究です。校訂者は比較的後代のスンナ派ウラマーを研究対象としているハーヴァードのKhaled El-Rouayheb。彼は同年、Kh. El-Rouayheb, Relational Syllogisms and the History of Arabic Logic, 900-1900 (Leiden: Brill, 2010) という偏執病的な研究も出版しており、今後ますます活性化していくと予想される後期イスラーム哲学研究において避けて通れない人物の1人となるでしょう。

El-Rouayhebによると、フーナジーもまた多くの後期哲学者たちと同様、(アヴェロエスではなく)アヴィセンナの諸著作を出発点としています。しかし彼はアヴィセンナの立場に対してしばしば修正を加えており、この修正が20世紀に至るまで、西はモロッコから東はインドまでという極めて広範な地域において、論理学の教科書中に組み込まれ続けたのだそうです(El-Rouayheb, "Introduction", p. iii)。とはいえ、フーナジーはアヴィセンナの議論に対して常に批判的なわけでもなく、むしろアヴィセンナ哲学批判者として知られるバグダーディー(Abu al-Barakat al-Baghdadi, 1165年没)やラーズィーの議論に対して否定的な態度を示し、彼らとアヴィセンナで見解の不一致が見られる点に関しては、ほとんど常にアヴィセンナの側に立つのだとか(Ibid., p. xviii)。ところが実際に内容を検討してみると、彼がラーズィーから多大な影響を受けていたことは明らかだったりして(Ibid., p. xviii)、この辺はかなり事態が錯綜しているように見受けられます。フーナジーの議論は彼と同時代以降のウルマウィー(Siraj al-Din al-Urmawi, 1283年没)やアブハリー(Athir al-Din al-Abhari, 1265年没)、カーティビー(Najm al-Din al-Qazwini al-Katibi, 1277年没)らの論理学書に対しても大きな影響を与えているのだそうで(Ibid., pp. xxiv-xxv)、彼らより少し後代に属するファナーリーの『イーサーグージー注釈Sharh Isaghuji』との関係も気になってくるところです。願わくば、El-Rouayhebにはテクストの訳注なども出版してもらえると助かります。

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