Mittwoch, 31. März 2010

2009 年度回顧と展望

結局、今年度かたちにできたお仕事は、以下の2 点でした。

1. 「ファナーリー存在論における〈関係〉:存在の必然性の証明をめぐって」『オリエント』第52 巻第2 号、2009 年、近刊(論文).
2. 「ファナーリー存在論における〈関係〉:〈存在〉の内在 / 超越をめぐって」、日本オリエント学会第51回大会(於同志社大学)、2009 年10 月11 日(発表).

どちらも快心の内容というわけではないので、必ずしも手放しでは喜べないのですが、 とりあえず与えられた時間内で最善は尽くせた、とすることにします。

とはいえ、本当はいま取り組んでいる形象論をきちんとかたちにして、 それを投稿するというところまで持っていきたかった。それを考えると、目標には遠く及んでいません。もちろん問題自体が相当錯綜しているというのはありますが、やはり上半期の怠惰にも一因があると思われます。

ということで、差し当たっての次年度の目標は、以下の通りです。

1. 形象論をきちんとかたちにする(上半期)。
2. Janssens の研究を手引きに、ファナーリーの一般存在論にアタックする(下半期)。
3. 語学に時間を割く。

しかしこれら以外にも、以下のような妄想もあります。

4. ファナーリーの普遍論をかたちにする。
修論で資料が足りず、ひどい論述しかできなかったファナーリーの普遍論。しかし『太陽の論考』Al-Risalah al-Shamsiyah に対する傍注の写本が入手できれば、これをタフターザーニーの普遍論と絡めてかたちにできるかもしれません。

5. ファナーリーの〈関係〉論を更に深める。
夏に出した論文では、かなり限られた側面からしか扱うことができなかった〈関係〉論ですが、そもそも〈関係〉というのは存在一性論者とそれ以外の哲学者・神学者とを決定的に分つような重要な論点の一つであるはずです。このような観点から、少なくとも〈関係〉論がどれほどの射程をもつのかくらいは調べ始める必要があります。

6. イブン=スィーナーの存在付帯性説に対する反応の系譜を調べる。
いわずと知れた存在付帯性説。これに対する反応のパターンは、管見の限りでは、以下の二つに分かれます:

a) 絶対存在は固有存在どもにとっての種的本性(tabi'ah naw'iyah)である。(ファフルッディーン・ラーズィー[など?])
b) 絶対存在は固有存在どもにとっての不可離的性質(lazim)でしかない。(トゥースィー、タフターザーニー[など?])

全く確証は得られていないのですが、もしかするとファナーリーの形象論はこのうち a) の考え方を継承したものなのかもしれません。現状では「形象というものは存在する」の証明が、何故「絶対存在は外界において存在する」の証明へとつながっていくのか、全くわからないのですが、a) の考え方によれば、絶対存在も一つの種であると考えられることになり、ここから絶対存在論と形象論が曲がりなりにもリンクしてきます。

5 と6 については、恐らく本格的に調べていたら、一年などでは到底足りないであろうことは明白なので、もう少し長いスパンで考えなければなりませんが、4 については資料さえ届けば(そしてその実際の内容次第では)、意外と早くかたちになる可能性もあります。

明日から2010 年度。気合いを入れ直します。そしてみなさま、2010 年度もまたよろしくお願い致します。

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