Samstag, 13. Juni 2009

論理学書大量発掘

先日、指導教員に以下のような論文(というか、学界動向の報告)の存在を教えてもらいました:

岩見隆「イランにおける論理学史研究」『オリエント』第28巻第2号、1985年、78-89頁.

コンセプトとしては、Rescher の『アラビア論理学の展開』N. Rescher, The Development of Arabic Logic ([Pittsburgh]: University of Pittsburgh Press, 1964) の、イラン版補遺。今から25年近く前のものであるにもかかわらず、この報告、驚くべきほど有用でした。氏は同報告の中で、近年(1985年現在)イランで出版されたテクスト・研究書をかなりの数、列挙しているので、その中から、いくつか気になったものを書き留めておこうと思います。

1. イブン=ムカッファア『論理学書』
Ibn al-Muqaffa', Al-Mantiq li-Ibn al-Muqaffa' [wa-]Hudud al-mantiq li-Ibn Bihriz, ed. M. T. Danishpazhuh (Tihran: Anjuman-i Shahanshahi-i Falsafah-'i Iran, 1357 [1978]).

『カリーラとディムナ』の翻訳者として有名なイブン=ムカッファアによる、アリストテレスオルガノンの梗概。アラビア語で書かれたアリストテレス論理学に関する著作としては現存する最古のもの。これにイブン=ビフリーズの『論理学の諸定義』を加えて、一緒にまとめられています。校訂者による長文の解説的序文(ペルシア語)は、Rescher の上掲書を遥かに超える詳細なもので、文献学的な指摘、写本の発見状況、その所在の記録は彼の独壇場、とのこと(84頁)。研究室所蔵。

2. アスィールッディーン・アブハリー『哲学への導き』、『論理学に関する論考』
Abhari, Athir al-Din al-, Hidayat al-hikmah and Al-Risalah fi al-mantiq in: M. T. Danishpazhuh (ed.), ''Du risalah dar mantiq'', Majallah-'i Danishkadah-'i Adabiyat wa-'Ulum-i Insani-i Tihran, 27 (1349 [1970 or 71]), pp. 457-94.

『イーサーグージー』Isaghuji の著者として有名なアブハリーの論考二篇を校訂したもの。但し『哲学への導き』に関しては、論理学の部分のみの校訂だそうです。ちなみに同書に関しては、Nicholas Heer がWeb 論文を自身のHP に掲載していて、その中でアブハリーの同書とそれに対するマイブディー(Mir Husayn ibn Mu'in al-Din al-Maybudi, 1504/5 年没)の注釈の抄訳注・解説を行っています(Heer, ''Al-Abhari and al-Maybudi on God's Existence'')。しかし『イーサーグージー』が余りにも有名だった為、『哲学への導き』(論理学・自然学・形而上学から成る)に対する注釈の殆どは、論理学の部分を省略しているそうです(Heer, op. cit., p. 3, note 21)。もしかしたらそうなるのももっともな内容のものなのかも知れませんが、いずれにせよ、レアな部分ということに変わりはないでしょう。テヘラン大の人文学部紀要ということでアクセスしにくいかと思いきや、京大の文学研究科の図書館に所蔵あり(WebCat)とのこと!取り寄せます。

3. カーティビー『基礎論理学』
Katibi, Najm al-Din al-Qazwini al-, Mantiq al-'ayn in: Z. J. Zahidi (ed.), ''Mantiq al-'Ayn'', Nashriyah-'i Danishkadah-'i Ilahiyat wa-Ma'arif-i Islami-i Mashhad, 21 (1355 [1976 or 77]), pp. 162-226.

『太陽の論考』Al-Risalah al-Shamsiyah の著者として有名なカーティビーの論理学書で、カーティビー自身、『太陽の論考』よりも注意を払って執筆したと言われている(80頁)のだそうです。マシュハド大の神学部紀要ということで一瞬挫折しかけましたが、やはり!ハーヴァードにはあるもようです(Hollis)。取り寄せます。

4. タフターザーニー『論理学精粋』
Taftazani, Sa'd al-Din al-, Tahdhib al-mantiq in: H. Malikshahi, Tarjamah wa-tafsir-i Tahdhib al-mantiq-i Taftazani (Tihran: [?], 1357 [1978 or 79]).

『神学の目的注釈』Sharh al-Maqasid fi 'ilm al-kalam の著者として有名なタフターザーニーの『論理学と神学の精粋』Tahdhib al-mantiq wa-al-kalam(確かこの著作は前者の第一部「知識論」の部分を要約したものだとかいう記述をどこかで読んだ気もしますが、忘れました)の、恐らく論理学の部分のみの亜ぺ対訳・解説。同書はイランにおける伝統的な論理学入門書として今なお有名な、モッラー・アブドゥッラー・ヤズディー(Mulla 'Abd Allah al-Yazdi, 1606/7 年没)の『精粋傍注』Hashiyah 'ala al-Tahdhib の元本でもあります(81頁)。

5. モッラー・サドラー『論理学に関する東方の閃光』
Mulla Sadra, Mantiq-i nuwin: mushtamil bar al-Lama'at al-mushriqiyah fi funun al-mantiqiyah, trans. A. Mishkat al-Dini (Tihran: Mu'assasah-'i Intisharat-i Agah, 1360 [1981]).

モッラー・サドラーがスフラワルディーの『照明哲学』Hikmat al-Ishraq のスタイルを真似て、その用語をも取り入れ、極めて簡明に論理学の体系を展開した著作らしい(82頁)。研究室所蔵。ただ、OPAC やらHollis やらを見る限りでは、ペルシア語訳と解説しか無いように見受けられますが、アラビア語原文は収録されているのだろうか…?いずれにせよ、これは1999 年にMulla Sadra, Tanqih fi al-mantiq, ed. Ghulam Rida Yasipur (Tihran: Bunyad-i Hikmat-i Islami-i Sadra, 1378 [1999]) というかたちで新たな校訂版が出ているので、そっちを見ればいいかも。最近ではIbrahim Kalin が内容を簡単に要約しているようですね(id., ''An Annotated Bibliography of the Works of Mulla Sadra with a Brief Account of His Life'', Islamic Studies, 42 (2003), pp. 21-62)。

6. アーヤティー『カテゴリーとそれに関する諸学説』
M. I. Ayati, Maqulat wa-ara'-i marbut bah-an (Tihran: Danishgah-i Tihran, 1363 [1964]).

著者のテヘラン大神学部での博論を基にした著作。10 のカテゴリー一つ一つについて、逍遥学派、照明学派、神学者、イルファーンの徒がそれぞれどのような見解をもっていたか並記していく、というかたちで議論が進められる(83頁)らしく、イスラーム哲学におけるカテゴリー論資料集として有用。大阪大学附属図書館箕面分館に所蔵あり(WebCat)。


といったかんじでしょうか。沢山あるなぁ…。

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